――― 2010年09月4日。『ベルギーの王さま』 ―――
どこかの出版社でライターとして使ってもらおうとして、たぶん一種の採用テストを受けていた。『いまどき紙とえんぴつで?』とは思いつつ、会議室っぽい場所の机に向かって、資料を見ながら、『統計によると、女性の66%がセクハラ被害を経験しており』…とかいう文章を書いていた。
書き終わったところで、きれいで感じのいい中年の女性編集者が、その原稿を見てくれる。そして、『文章はいいけど、書くのに時間がかかりすぎですよね』と言う。その通りだと感じて、自分は恐縮してみせる。
追ってその社からの発注だったのだろうか、自分は『ベルギーの王さま』である人物を取材におもむく。ベルギーの王さまでありながら彼は、なぜか原宿あたりにお屋敷をかまえている。そしてそのお屋敷が、御殿のような、教会のような、商業ビルのような…というふしぎな場所でもある。
で、そこでお目にかかれた『ベルギーの王さま』は、見た感じ30代くらいの茶パツの青年だった。ちょっとバタ臭い顔つきはしていたけれど、まったくふつうに日本語をあやつり、ほとんど日本人と変わらなかった。
そして自分は、そのお屋敷に存在したパイプオルガンに目をつけた。
『これは、こうやって弾くものなんですか?』
『いや、オレは弾けないし、よく知らないんだよね』
さわってもさしつかえないらしいので、自分はそのパイプオルガンをいじって気ままに音を出してみた。そして気がついたのは、鍵盤と鍵盤の間に、『ワンタッチで和音を出すための特別なキー』があることだった。
(註。それは、アコーディオンの左手側についているボタンのことだろう)
やがてパイプオルガンに対して気がすんだ自分は、『そうだ、ともかくも王さまの写真を押さえておこう』と考えた。そこで王さまを探したら、彼は近くの喫茶室で、別の客人と接見しようとしており、かつ、たばこをくわえて火をつけようとしているところだった。
『ちょっと悪いかなあ』とは思いつつも自分は、『すみません王さま、ちょっとお写真をいただけませんか?』と、声をかけた。すると気さくな王さまは、ありがたくも『ん? いいよ?』と快諾してくれた。
では、写真を撮るのに場所はどこがいいか、やはり絵になるのは、さっきのパイプオルガンを背景にしてかなあ…と考えて自分は、というところで目がさめた。
0 件のコメント:
コメントを投稿