2010/12/24

なぞめいた海上の遺構

 ――― 2010年12月24日。『なぞめいた海上の遺構』 ―――
おっさんの船頭が操る小舟に乗って、われわれ少年少女は、海の上に口を開いたふしぎな遺構に向かっていた。
やがてわれわれが見たのは、海面からわずかに顔を出しているだけの岩盤と、その頂点に開いた四角い穴であった。

見えている部分はごく小さいが、しかしその岩盤はひじょうに大きく平べったく広がっているもので、その一帯に巨大な暗しょうをなしているようだ。なるほどこれでは、小舟でなくては近づけない。
またその岩盤の頂点の穴は、ほぼ正確に真四角で、人が開けた穴にしか見えなかった。そしてその大きさは、一片が60cmあるかどうかという小ささだった。

ここで自分の頭の中に、地図のイメージが浮かんだ。地図は、近畿地方を表していた。
そこに絵解きされたルートによると、われわれは大阪湾から出発し、南下した。そして、ひじょうに狭くて通常船舶が通れない海峡を通過、さらには知られざるふしぎな海流に乗ったりして、いま和歌山県沖あいのこの場に達したのだった。

さて、事前に聞いた話だと、この遺構と呼べそうなものは、江戸時代くらいのむかしに金が採掘されていた場所らしいとか。できるなら、その内部を探検したいと思っていたけれど。
けれども目の前の心細い穴は、人間が入っていけるものという感じがしない。そもそも波をかぶるくらいの低い位置に存在する穴なのだから、その中は海水に満たされてしまっているのではなかろうか? どうしたものかと、われわれはその穴を眺めているばかりだった。

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