2011/01/12

さっき買ったばかりの本を

 ――― 2011年1月12日。『さっき買ったばかりの本を』 ―――
学園祭のような、同人誌即売会のような、そんなイベントの最中の学校。自分は図書室のようなところで、本棚を見ている。
見ると、自分がちょっと興味ある作家のまんが本がある。それがA2版くらいの、やたら大きな判型のものを自分は取り出して、席について開いてみる。
するとそこへ、その本の持ち主らしき、見知らぬ生徒くんが現れる。で、だいたいこんなことを言う。

『あれ、ボクがさっき買ったばかりの本を、キミが読んじゃってんのかい! ま、いいけど、汚さないでくれよ!』

おおらかなことに、このかいわいでは、買ったばかりの本をとりあえず共同の書棚に突っ込んで、自分はまた買い物を続ける、ということがあたりまえのようだ。

それで自分は、おごそかな手つきを示して、本を傷めぬよう気を付けることを伝える。すると持ち主くんは、また別の買い物に行ってしまう。そしてまんがの本を眺め続けている自分だが、その内容が『そんなに面白くもないな』と感じる。

2011/01/06

真冬の木に残ったしなびた柿の実

 ――― 2011年1月5日。『真冬の木に残ったしなびた柿の実』 ―――
自分は部屋の中で、かって自分がファンだったバンド≪8 1/2≫の印象を、どう伝えようかと考えていた。
ふと気がつくとN子が お風呂の水を手でかき回していた。入浴しようかどうしようか、考えあぐねている気配だ。するとここは、かって自分も暮らしていた、世田谷のN子の部屋だったらしかった。

『入りたいなら、お風呂に入ったらいいじゃないか』
『じゃ、そうするけど、でも夕ごはんは…』
『ぼくがなにか作ろうか? スパゲティでも』
『うん、いいけど…たぶんパスタがないよ』
『それくらいは、買ってくるさ』

N子が疲れ気味のようなので、何とか力になりたいと考えてはいたようだ。そして自分は部屋を出た。そこで気づいたが、自分の財布の中にお金が少ない。にしても、スパゲティとベーコンくらいは買えるだろうと考えながら。

路地の上に出ると、N子が窓から身を乗り出して、なぜか興奮気味に竹ざおを振り回し始めた。アパートのすぐ横に生えている柿の木から、果実をたたき落とそうとしているのだった。
すると、真冬の木に残ったしなびた柿の実が落ちてきた。自分はそれを地面に落とすまいと、必死に受け止めた。そうして5、6個の柿の実が、自分の手の中に残った。これを夕飯の食材の足しにしようというつもりなのかな、と考えていた。

それから自分らは何か話そうとして、N子がベランダから乗り出すと、その顔が自分の目の前近くまで届くのだった。曲芸のように、折り曲げたひざをベランダのどこかに引っかけて。自分はびっくりした。

『すごいな、1階と2階でキスできそうじゃないか!』

しかしN子は、そうね、とだけ言って引っ込んでしまった。それからスーパーに向かいながら、自分は考えた。
柿は食べられるものではあろうけれど、しかしこの後の献立にどう関係があるのかと。柿のジャムはあっても、柿のパスタソースはなさげ。
またよく見ると、いくつかの柿の実のへたのあたりに、何か菌類が生えていた。腐った木の切り株などに発生する、もこっとして堅いやつが。生えているのはふつう食べない部位なので、そこを切り捨てれば問題ないのかも知れないが…。